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 事故・事件と市民社会 

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2センチの手すりのズレ


9月の下旬に、古い映画、あるいは、世界のどこかで賞を取って、話題になった映画などいわゆる映画好きの輩が集まる小さな映画館(以前、仲代達矢さんのシリーズをやって、ほぼ毎日通ったことがある)フィルム・フォラムに行った。
「The Fool(馬鹿)」という2014年のロシア映画だった。監督は、ユーリ・ビコフ氏で、スイスのロカルノ映画祭や、フランスのアラス映画祭で、最優秀男優賞、銀賞と、評決員賞、若者投票賞、その他を得た作品である。

映画の粗筋は、かいつまんでいえば、こうだ。
ディーマ・二キチン氏は、ロシアのある地方の配管技師で、同時に地方自治体の下で福祉住居棟の営繕補修の技師でもある。市営のアパート群で、よくあるお決まりの便所のパイプが破裂したという苦情を受けて修理に行くことを命じられる。調べてみると、パイプの内壁に亀裂が入っているのに気附く。不思議に思って、建物の外部に回ってみると、なんと、一階から、最上階(10階以上)まで、亀裂が走っている。遠からず建物が崩壊することは、技師には、一目瞭然である。(技師は、24時間以内と判断する)そこで、ディーマは直ちに役所に出向く。

そこでは、その地区の政務を担当するニーナ・ガラガノバ市長の就任何年目かの祝宴の真っ最中。地区の人々から、「ママ」と呼ばれるニーナ女史は、にこやかに喜んで祝辞を受けている。飛び交うウォッカ、ワイン。食事も豪勢だ。バンドが入って、チークで踊っている組も。だが、そんなことより、ディーマは、緊急事態だと主張し、ニーナや他の役人を別室に呼び出し、市立の居住建物に亀裂が入っているので全建崩壊する、緊急に800人の居住者を移さなければ、と主張する。ニーナは他の取巻きとの話で、中央政府からの補助金は、既に市の役人(ニーナも含めて)の親戚、友人の、「必要経費の資金繰り」に廻し、営繕用の資金は、全く無い。「だって、あのお役人達にも鼻薬が必要じゃないの。」と平然と述べるニーナ。彼女の取巻きは、「当たり前だよね。」と。

ディーマは、役場で一緒に働いていたマツーキンとフェドロフに事の重大さを訴え協力を求める。実証するため、空き瓶を屋上から落とすディーマ。屋上から手をだして、瓶を落としたのだが、瓶の着地点は、建物から1m以上離れた場所。背筋が寒くなった映像だ。だが、夜半に、ニーナと、その一味は、過去の建物建築に関するすべての資料を役所の裏庭に集め、ガソリンをかけ、証拠はすべて消滅される。ディーマを支持した二人は、ニーナに与する政治家達の集会にきた警備の職員に銃殺され運河に投げ込まれる。ディーマは、命は助けるので、妻子を連れて、すぐに他地域に立ち去れと、通告される。

ディーマは、銃殺の音を聞き事の重大さを理解し、家に帰り、妻と子を車に乗せ、一旦は街をでる。だが、いつ崩壊するか判らない建物の前を通り、そこで生活している人々を考えると、一人だけ逃げ出す訳にはいかない、と決心。妻に、子供を連れて先に行くようにと指示する。妻は、「あんたはバカよ、大馬鹿よ。」と、涙ながらに哀願する。だが、ディーマは、一人、居住者の住む建物に戻り、一階ごとの住人にこの建物は危険で、崩壊寸前であるから、直ちに出るように、と、一室毎に、言って回る。ディーマの言葉に、驚き、信じられない、と、逡巡する居住者達。一応、全員外にはでるが、寒い冬の中、建物は、そのまま建っている居住ビル。やがて住民全員が余計なことをほざく野郎だ、と、怒りに燃え、ディーマに、殴りかかり、また元の部屋にもどる。動かなくなったディーマ。その上にふる雪。。。

この映画を見た時は、ロシアは、今でも建前と本音がこれだけ違うのか、と、いうのと、それにしても、ロシアは、こうした映画を堂々と世界に公開し、むしろ、国内の実態を、海外に知らせることにより、国内の体勢を固めていく、という意思を、見せたのだろうか、と、プーチンさんのやり方も、中々いいな、など、お気楽に考えていたのだった。

ところが、10月になっての中頃、日本の新聞のネットを見ていたら、なんと、あの横浜の傾斜マンション問題が、それから連日、ネットを賑わしたではないか。
バカは、ロシアばかりでは無い、というのが第一印象だった。
だが、この二件(一方は、映画、一方は事件)を比べてみるにつれ、細かな部分かもしれないが、違い、に気づいたのである。

1。一方は政治的腐敗。一方は、経済的腐敗。(政治の腐敗は、必ず経済の腐敗が裏付けている。だが、逆は必ずしも真ならず。)だから経済的腐敗なら許せる、とは考えないが。

2。一方は、(映画とはいえ)一階から最上階まで、素人にもクッキリ判る亀裂が、見ただけでも20センチ位入っている。(正直、この亀裂にそれまで誰も気づかなかった、ということの方が、不可解に思えた。)横浜の場合は、手すりの結合部分が2センチ位ずれていた、というので、注意深くない人であれば、そのまま、見過ごしそうなズレ。(正鵠な日本、ここにあり。)

3。腐敗が判った場合でも、堂々と、書類を庭に集め、ガソリンを撒き、火をつけて、完全焼却を狙う小役人。一方では、昔のプリント用紙などを見せながら、その数字が正しいとはいえない、と、訳の判らない説明をしつつ、会社のトップが涙にくれる。

会社のトップが説明をせず、涙にくれながらお詫びのお辞儀をする、というのが、なんとも不思議ではあったが、「人が良い、だけでも、トップは務まる」というのと、「自分を護るためには、誰でも消す。」のいづれを選ぶか、と言われれば、涙組かなぁ、というのが正直な感想。

だが、もし、プーチンさんが、海外に自国の恥をさらしながら、逆に、それを内政のテコ入れにする、ということを考えのもとに制作した結果の映画だったのであれば、その度量は、安倍さんまた日本の企業トップにも、見習ってほしいものですね。




 

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