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賃金不払いは広まっている? 

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日本で、長く多くの企業が護ってきた、大学を出て入社したら、その社員は企業に定年まで勤めて退職後は、悠々年金生活、という終身雇用モデルが解体しはじめた、と、報道されてから数年になる。米国では、21才とか22で入社した人が50、60になっても、まだ同じ会社に勤務、というのは余程特殊な例(待遇が飛び抜けていいのか、或いは、他に雇用してくれる会社が無いのか)と思われている。
他に雇用してくれる会社が無いという訳ではなくて、皆が、同じ会社に留まる、ということの意義が、よく判らないという一般アメリカ人に説明するのに、最初は戸惑ったのだが、その内、日本の特殊性の一つとしてみなされたようだった。

無論、終身雇用がアメリカで皆無ということではない。大富豪の投資家、バフェットさんのような人の会社では、社員は家族、と、彼自身が語っているのをTVでみたこともある。また、日本でも上映されたドキュメンタリー「ハーブとドロシー」のように、地方の郵便局員ハーブとその妻ドロシー(図書館司書)が、勤務地を変えず毎月の給金を貯めては好きな絵画を買い、ワン・ベッドルームのアパートに収納していく内、その数が4、000点以上となってしまった。それでも、ハーブは、生涯、郵便物の仕分け室に通っていたという。郵便局は連邦政府が運営しているから出来たことだ、ということはあるだろうが。

蛇足ではあるが、その後、高齢になったこの夫妻は、アパートがコレクションで埋まり、収納場所も無くなった頃、それらを、そっくりスミソニアン研究所に寄付し、全米50州にある美術館に、一州に50点として、2,500点を寄贈することとした。無論、その代償として、夫妻は年金を得ることになった。購入した作品は殆ど、購買時は、駆け出しだった無名の画家が多く、その後大成して、有名画家となり、作品の価値も、天文学的になったという。絵画については、究極の投資家並の目利きだったということだろう。(ハーブは2013年に没した。)

一般には労組や役人が賃金未払いを問題にするのは、低賃金のサービス業種で、長時間勤務、最低賃金法以下の賃金、超過勤務手当の不払い、客の払ったチップを渡さない、などのケースである。これらは大きな問題で、取り締まりも上手くいかない。

ところが、実際には、問題は低所得の分野だけではない、と書いたのは、NYタイムスの、しかも「社説」だった。(4月21日版)

グーグル、アップル、インテル、アドビというIT大手に勤めるソフトのエンジニア、その数64,613名が、「談合(独占禁止法違反)」で訴訟し、近々手打ちとなる、と。エンジニアの言い分は、これらの会社が協定を結びお互いの社員には、手を出さないと秘かに結託した結果、タレント合戦が行われれば、得ただろうという給与損失額は、2005-9年の間に、30億ドルに上る、という。 

この訴訟を受けて、2010年に法務省が行った調査で証拠となったのは、Eメールその他であり、それまでのシリコンバレーが、自由な競合を謳歌していたこと、特にグーグルの役員が企業理念について全社員に、「(同業他社はいざしらず)我が社は、悪いことに組せず(Don’t be evil)が目標である」と一度ならず、大見得を切ったことが、今回裏目にでて、シリコンバレー全体の印象に悪影響が出るのではないかと懸念されている、と。

訴訟の内容は、まさしく、ホワイト・カラーの給与不払いである。ソフト・エンジニアは肉体的暴力に晒された訳ではないが、個人の利益に反する「競合をさせない」という雇用機会の損失に晒された。結果は同じである。給与として個人に支払われるべき金銭は、替りに企業の資産となり、役員や株主にと流れていったのである。

低賃金労働者に対する未払いに加えて、高級取りのクラスでも不払い、となると、問題は一層深く、悪くなる。経済政策研究所のデータによれば、2012年には、労働省は、30万8千人の低所得労働者が、不払訴訟で勝った2億8千万ドルの裁定額を企業側に支払い命令を出した。これは、同年間の、路上、銀行、ガソリン・スタンド、コンビニでの強盗被害総額のほぼ倍額である。(比較の対象がユニークだとは思うが)

更に、裁判で勝った逸失賃金の額は、全国の不払い被害のほんの僅かにすぎない。なぜなら、労働省は、700万人の労働者を対象に調査をするのに、僅か1,100名の調査員しかいないし、未払い問題自体を調査対象から外した州も複数あるからである。

訴訟のなじまない日本でも、ネットで見る限り読売の発言小町 や「キャリコネ」のようなサイトは、日本の抱える様々な問題のありかを末端から教えてくれる)派遣と、正社員の間には、大きな溝があるように見える。いわば、正社員は、昔のご家中や旗本で、派遣は、草履取りとか、風呂番、というような位置づけなのだろうか? 新しい問題と言われながら、実際には、過去の幕藩体制がそのまま企業に乗り移ったのか、と、一瞬思う時がある。

この社説記事への読者コメントで面白いと思ったのは、移民とか低所得者層への賃金不払いは許せないが、高級取りのエンジニアについては、業界として取り組むべきだ、という二段重ねの対応を提唱している読者がいたことだった。「現実的」と言われる米国らしいと思ったのは私だけだろうか?

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