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事故と対応 3 

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メキシコ湾マコンド油井には、ディープ・ウォーター・ホライゾンと言われる海底油田掘削施設があり、BP社主導で海洋資源開発計画が始められていた。この原油掘削施設は9年前に竣工、建設を請け負ったのは韓国の現代(Hyundai)重工であったが、所有者はTransocean社で、BP社に2008年3月から2013年9月まで5年半の期間契約リースされていた。BPは、マコンド油井開発権の65%を所有していた。(残りは、アナダルコ石油会社が25%、三井石油(MOEXが10%。)
220px-Deepwater_Horizon[1]
この開発計画は、海洋表面下1500メートルのマコンド海底油井から原油を汲み上げる目的で、事故当時は、油井から噴出せず汲み上げるよう施設に至る接続パイプの溶接部分と油井の蓋の密閉度を確保する為、特別に製造されたセメント材がその用途に適うかどうかの完全性試験の段階であった。そして、このセメント泥濘材の製造と実地操作を担当したのは、ハリバートン社である。もし成功裡に試験が終了していれば、その後は蓋をして、将来必要な時までいわば寝かせておくこととなっていたという。(従って、今日明日原油生産が始まるという訳ではなかった。)
2010年4月20日夜9時過ぎ、メキシコ湾の海洋表面下一マイル(1.6Km)に位置していた掘削点からメタン・ガスが噴出し、同時に原油が接続パイプを伝わって施設に流出し、爆発を起こすという事故が起きた。施設の労働者の死亡者(行方不明)11名、怪我人17名を出し、原油流出量は約500万バレルという歴史上最大の原油流出事故となった。施設は4月22日に沈没。300px-US_Gulf_of_Mexico_offshore_gas[1]
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当初米政府は、情報が十分に入らなかったことと国民にパニックを与えるのを恐れてか、流出量の予測を中々公表せず、また出した数字も控えめであったという。(事故後1月半以上の6月10日の時点で、公式予測は一日25000-35000バレルと発表。)とはいえ原油流出が直ぐに停止できないと見極めがつくや、5月19日には、政府・科学者・大学関係者など業界専門家を集めた大統領特別調査委員会 Presidential Commission Investigating The Accidentを作り、流出率調査団(Flow Rate Technical Group)を結成、調査団は6月20日には、流出量を一日35000-60000バレルと推定発表し、政府も8月2日には一日62000バレルと訂正発表した。
当初から、米政府はBPをこの事故の責任者として発表、BPもそれを受けて債務には応ずると述べていたが、事故の発生調査が進むにつれて、セメント施工のハリバートン、施設所有者のTransocean(両社とも米国企業)も訴訟に巻き込む姿勢をみせ、政府と会社(外国企業BPを含む)との交渉はギクシャクしたが、その理由の一つは、なんと当時BPの会長であった英国人のトニー・ヘイワード氏の英語がいたく地元米人のカンに触ったからだとの報道も。(米人には英国人の英語は時に傲慢に聞こえるという)その結果、ヘイワード氏はCEOの座を去り、代わりに米国人のロバート・ダドレィ氏がCEOとなって政府及び地元の人々との折衝をはじめた。(余談ではあるが、このヘイワード氏は、その後モスクワで、BPとロフネスチ社とが油田開発の協定を結ぶ下交渉で活躍とか。ロシア人は、英語か米語かよりも商談として可能かどうか実を取ったのだろう。アメリカも大人にならなければ。)

油井からの原油流出が一応蓋をされ停止したのは、7月15日であったが、その後も浸潤は止まらずセメントを流し込む作業を続け、この油井の完全封鎖が発表されたのは事故後5ヶ月経った9月19日であった。そしてこのような事故の時の前例に従い、マコンド及び周辺の掘削場は放棄されることになった。BPとしては大金をつぎ込んだ挙句の大損となったのである。

更に10月には、大統領特別調査委員会の報告書を受けて、L.A.タイムス、NYタイムスが以下の記事を載せた。
「ハリバートン社は、セメント材を開発し、ラボ・テストを行ったが、その結果はセメント混合材は業界基準に満たなかった。数度のテストの少なくとも一回の結果は、3月8日にBPに渡されたが、BPはその対応措置を怠ったと大統領特別調査委員会の主任調査員は述べている。」
だが、責めをBPのみに求める報道は、次第に、責めはBPばかりではないとして、リグの所有者Transoceanの労働者の多くが通常のメンテナンスの不備を述べ、職場の安全性に疑問を持っていたが、問題を提起して会社側からの報復を恐れて言えなかったと語ったなどの報道もある。また、セメント材の材質設計がBPなのかハリバートンなのかは未だ判明していない。現在、湾岸クレーム処理委員会(Gulf Coast Claims Facility)が今回の事故処理に携わることになっている。

多くの災害には人災が関わってくるのが21世紀の特徴だ。人災の部分はそれを報道する機関が、正確に、政治的配慮なく、事実のみを記すことから理解が始まる。国民の不安を掻き立てることを恐れて報道管制するというのは、究極的に見て国民の為にはならない。
アメリカで起きた過去の事故3例を纏めながら感じたのは、どの機関にも阿ることなく事実をそのまま発表するという報道のスタイルとそれを護る報道機関の姿勢である。良薬は苦いという事実を私たちは正面から取り組む必要があるのではないか、と一連の日本の尖閣諸島での海保衝突報道を見て感じたのは私一人ではないはずだ。外務省の言い分によれば、尖閣諸島に「領土問題は存在しない」のであれば、尚更日本領土内で起きた事件として、それを正確に報道するのがマスコミの責任ではないのか。政府の記者クラブ発表を待つのが報道に携わる者の唯一の道ではないはずだが。

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